嫌われる勇気 まとめ

日本人は、周囲を気にして自分を出せず、悩みを深くしていく人も多いでしょう。対人関係に悩むことの多い時代だからこそ、西洋心理学の古典を分かりやすい対話形式の入門書で読んでみることをおすすめします。違った角度からの画期的なアドバイスは大きな刺激になり、幸せを導く扉を開くことができるでしょう。

◆『嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え』
本書は、世界的に有名な心理学者の1人、アルフレッド・アドラーの思想を、哲学者と青年による対話形式で易しく解き明かしていきます。
アドラー心理学を教えるのは、哲学者。聞き手は、アドラー心理学に懐疑的な内気な青年です。
実際には、日本のアドラー研究の第一人者と、アドラー心理学に興味津々の中堅ライターという絶妙の組み合わせが、これまでにないアドラー心理学の入門書を生み出しました。

◆著者紹介
・岸見一郎
1956年、京都生まれの哲学者。京都大学および大学院では西洋古代哲学史を専攻。アドラー心理学研究も積極的に行い、日本のアドラー研究の第一人者として、執筆、講演活動を活発に行っています。アドラーの多数の著作を翻訳しています。

・古賀史健
1973年、福岡生まれのライター、編集者。20代の終わりに岸見一郎の『アドラー心理学入門』を読み、本書の企画を発案、実現したという経緯があります。活き活きとしたインタビュー原稿を得意とする筆者が、思い入れのある岸見氏のアドラー研究を、みずからのインタビューで解き明かしていきます。

◆アドラー心理学とは
アルフレッド・アドラーの心理学は、欧米では絶大な支持を得ています。フロイト、ユングと並ぶ心理学の3大巨匠とも称されているのですが、日本では認知度が低くなっています。フロイトやユングは知っていても、アドラーは知らないという人が多いのではないでしょうか。

アドラー心理学では、すべての悩みは対人関係の悩みであるとしています。人間関係も人生もシンプルに考えることで、悩みを解消していきます。

また、アドラーの考え方は、フロイトの原因論に対し、目的論という考え方に立脚しています。
原因に突き動かされるのではなく、自分の目的に向かって生きているので、過去のトラウマというものはなかったと考えます。過去にある出来事があったからこういう行動を取る、というのではなく、何か目的があるからその材料として過去の出来事を利用してしまう、と考えます。
目的をどこに置くかは人や状況に依ります。頂上へ達することが目的なら、ヘリコプターで飛んで5分も滞在すれば終わってしまいますが、山頂にたどりつけなくても登山そのものを楽しむ人生を良しと考えるのです。
いかがでしょうか。

◆嫌われる勇気とは
本書は、「嫌われる勇気」の必要性を説いています。この勇気を持つことこそが、幸せな人生につながるというわけです。
人はもともと、周囲に嫌われないように振る舞いたいものです。ところが、周囲の人のことばかり考えていると、自分らしくありのままで生きることが難しくなります。我慢ばかりでストレスがたまりますし、トラブルの責任を他人に押し付ける発想も出てきます。

そこで、発想の転換が必要になります。ポイントは、自分が「人としてこうありたい」と思えるような行動を取る、ということです。自分の行動をこのような考え方に変えると、自分の素直な気持ち、意志を貫く勇気が芽生えてきます。そして、自由を実感し、幸せを感じることができるようになるのです。

具体的には、「自分にとって譲れないポイント」を決めておきます。
好きなこと、嫌いなこと、どんな行動を取っている自分に「価値がある」と感じられるのか、ということを明確にしておきます。そのうえで、その価値観に合った行動を心がけます。

行動する際は、自分の意志を相手に伝えることが大切です。ただし、自分の価値観に固執し、周囲にも押し付けるのは本末転倒になります。あくまでも、変えるのは自分だけなのです。
そして、アドラーによると、自分が変わると周囲も変わると言います。自分が勇気を持つことで周囲にも良い影響を与えることができるとしたら、積極的に取り組みたいですね。

◆まとめ
本書を読むと、過去や周囲のしがらみにとらわれている自分の考え方のクセに気づかされる人が多いのではないでしょうか。アドラー心理学では、過去はなかったことに、周囲と自分とは切り離して考えていきます。一見、乱暴な発想に思えますが、読み進んでいくと、逆に自分を大切にし、周囲にも良い影響がある方法であることがみえてきます。

おそらく一般的な日本人にはあまりなじみのない発想だと思いますが、うまく摂り入れられれば、ありのままの自分を受け入れ、周囲との関係も上手に築けるようになる、画期的な考え方です。

難しい心理学の考え方が、本書では、対話形式で分かりやすく、かつ説得力を持って語られます。書名もさることながら、内容も思わず引き付けられる見出しが付けられ、ぐいぐい引き込まれていきます。口コミでは、一気に読んでしまったという感想が数多く寄せられており、発売以来、幅広い読者層の支持を得ています。

アドラー心理学の入門書としてはもちろん、対人関係や今の生き方に疑問を持つ人すべてに道しるべとなる内容です。青年の立場で読み進むうち、いつの間にか青年と同様、アドラー心理学に引き付けられるでしょう。そして、本当の幸せな生き方に近づくことができると思います。ぜひご一読を。

◆本書の構成
・第一夜 トラウマを否定せよ
知られざる「第三の巨頭」
なぜ「人は変われる」なのか
トラウマは、存在しない
人は怒りを捏造する
過去に支配されない生き方
ソクラテスとアドラー
あなたは「このまま」でいいのか
あなたの不幸は、あなた自身が「選んだ」もの
人は常に「変わらない」という決心をしている
あなたの人生は「いま、ここ」で決まる

・第二夜 すべての悩みは対人関係
なぜ自分のことが嫌いなのか
すべての悩みは「対人関係の悩み」である
劣等感は、主観的な思い込み
言い訳としての劣等コンプレックス
自慢する人は、劣等感を感じている
人生は他者との競争ではない
「お前の顔を気にしているのはお前だけ」
権力争いから復讐へ
非を認めることは「負け」じゃない
直面する「人生のタスク」をどう乗り越えるか
赤い糸と頑強な鎖
「人生の嘘」から目を逸らすな
所有の心理学から使用の心理学へ

・第三夜 他者の課題を切り捨てる
承認欲求を否定する
「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない
「課題の分離」とはなにか
他者の課題を切り捨てよ
対人関係の悩みを一気に解消する方法
「ゴルディオスの結び目」を断て
承認欲求は不自由を強いる
ほんとうの自由とはなにか
対人関係のカードは、「わたし」が握っている

・第四夜 世界の中心はどこにあるか
個人心理学と全体論
対人関係のゴールは「共同体感覚」
なぜ「わたし」にしか関心がないのか
あなたは世界の中心ではない
より大きな共同体の声を聴け
叱ってはいけない、ほめてもいけない
「勇気づけ」というアプローチ
自分には価値があると思えるために
ここに存在しているだけで、価値がある
人は「わたし」を使い分けられない

・第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
過剰な自意識が、自分にブレーキをかける
自己肯定ではなく、自己受容
信用と信頼はなにが違うのか
仕事の本質は、他者への貢献
若者は大人よりも前を歩いている
ワーカホリックは人生の嘘
人はいま、この瞬間から幸せになることができる
「特別な存在」でありたい人が進む、ふたつの道
普通であることの勇気
人生とは連続する刹那である
ダンスするように生きる
「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ
人生最大の嘘
無意味な人生に「意味」を与えよ