論語と算盤

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今の日本の現状に行き詰まったら、近代日本を民主国家に育てた渋沢栄一の経営哲学を学んでみませんか?現代の実業界のトップがこぞって指針としている本が、最近ふたたび注目を集めています。その経営哲学の内容をのぞいてみましょう。

渋沢栄一著『論語と算盤』における理念とは

本書は、「論語」と「算盤(そろばん)」という、一見そぐわないものを合わせて論じたものです。

「論語」とは、中国の儒教の思想家である孔子と、孔子の高弟の言葉を、孔子の没後に弟子たちが編纂した書物『論語』を指しています。孔子が活躍したのは、紀元前500年前後ですから、今から2,000年以上の昔ということになりますね。
『論語』には、「一を以て之を貫く」「過ちて改めざる これを過ちという」「知らざるを知らずとなす これ知るなり」など、私たちが昔から親しんでいる言葉が多数あります。このように、『論語』には、私たちの社会生活に欠かせない考え方、道徳観が多数盛り込まれているのです。

一方、「算盤」は経済活動全般を指しています。当時、著者の渋沢栄一は、ヨーロッパを見聞し、銀行の必要性や資本主義に基づく経済活動を日本に根付かせるために、精力的に活動していました。

渋沢栄一は、孔子の教えを説いた『論語』の内容が、経済活動の柱となるべきものと考えていました。本来、利益を追求する経済と、他人の利益をも重んじる思想とは相容れないと思われるのが普通ですが、渋沢は、経済と道徳は軌を一にするものであり、両立させるというよりは、両方がなければ成り立たないと考えていたのです。
「論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの」と定義し、真の富は、道徳に基づくものでなければ永く続かないと考えていました。
また、武士道を実業道、すなわち経営哲学と同一視していた点も特徴的です。

現代の日本は、経済が行き詰まり、企業倫理や企業責任が問われる事件も頻発しています。渋沢の教えは、人と競争をして商売をしながらも道徳を守ることが重要であると説いており、人の心をとらえ、信用が大きくなれば、大きな資本を活用できるとしています。このような渋沢の考え方は、孔子の『論語』に由来しているのです。

本書は、『論語』を軸としながら経済のあり方についての独自の経営哲学を、後進の企業家たちを育てるために語った談話集です。道徳と経営は「合一」すべきであるという持論を展開し、利益はみんなのために使うという公益の思想が語られています。

経済一辺倒では立ち行かなくなった日本経済に、道徳が必要であることを考えさせられる一冊と言えるでしょう。

著者 渋沢栄一

幕末の1840年に生まれ、1931年(昭和6年)に亡くなった日本の実業家です。明治維新前の1867年にパリの万国博覧会に招待された、将軍徳川慶喜の弟徳川昭武の随行員としてヨーロッパに渡り、見聞を広めました。翌年に帰国し、その後、大蔵官僚となりますが、1873年に退官し、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)の頭取に就任しました。
資本主義による自由経済が始まったばかりの日本で、帝国ホテル、王子製紙、東京ガス、京阪電鉄、東京証券取引所、サッポロビール、明治製糖など、約470社の会社の設立に携わったとされています。
「私利を追わず公益を図る」の観点から、財閥を作らなかったというのも渋沢の思想を表しています。また、社会活動にも熱心で、東京慈恵会、日本赤十字社などの設立にも携わりました。商業教育に関しては、一橋大学、東京経済大学の設立に協力、女子教育に関しては、日本女子大学、東京女学館の設立に関わりました。
現代経営学の祖と言われるピーター・ドラッカーは、経営の社会的責任についての渋沢の見識を高く評価しています。

論語と算盤まとめ

本書は、明治の実業家渋沢栄一による、利益を追求しながらも人の幸せを両立させる道徳観の重要性についての談話を、常用漢字と現代仮名づかいに改めて、読みやすくしたものです。これまで『論語』を敬遠していた人も、渋沢栄一の文章が難解で読めなかったという人も、本書であれば無理なく読めるでしょう。
現代にも通じる普遍的な渋沢の思想に触れ、未来を明るくする経営哲学を学んでみてはいかがでしょうか。

論語と算盤の構成

第1章 処世と信条
第2章 立志と学問
第3章 常識と習慣
第4章 仁義と富貴
第5章 理想と迷信
第6章 人格と修養
第7章 算盤と権利
第8章 実業と士道
第9章 教育と情誼
第10章 成敗と運命